K.K.TOYAMA
県医師会、市医師会への要望書
2003年9月26日提出 富山県医師会、西砺波郡市医師会への要望書
平成15年9月26日
要望書
社団法人 富山県医師会
会長 ×× ×× 様
要望者
住所 富山県西砺波郡福岡町--
氏名 ×× ××
性同一性障害者の医療に関しての要望に関して
この度は要望書の提出についてご理解下さり大変嬉しく思います。この要望書の項目が達成され、性同一性障害の当事者がよりよい医療環境の下、より充実した医療を受けることが出来るよう宜しくお願い致します。
性同一性障害(GID)とは、自分が身体的、社会的にどちらの性別であるかを認識していながら、精神的には自分自身の身体的、社会的な性別に違和感を抱き、または反対の性別に属していると感じ、それにより強い精神的な葛藤を覚え、精神の性別と生まれ育てられてきた性別との間に生ずる適応の障害をいいます。
そのため当事者は、医学的、心理的、社会的、家庭的及び経済的なさまざまな問題を抱えています。
その中でも、医療従事者の無理解、医療体制に苦痛を感じ、病気にかかっても病院に行くことの出来ない当事者がたくさんいます。
性同一性障害の当事者が安心して医療を受けることが出来るように、また性同一性障害の治療が出来るように、医療機関に対し、下記の要望項目の改善と実現を要望します。
要望項目
- A.当事者に対する対応として
- 1)受付の対応
名の呼び方→男性名・女性名とわかるフルネームは避けて欲しい。当事者が周囲にGIDだと悟られないように、少し遅れて名乗り出る事を念頭に置いて欲しいです。 - 2)診察券
それとわかる性別欄をつけないで欲しいです。 - 3)なるべく個室診療でお願いしたい
カーテン一つというのでは、プライバシーが保てないと思います。 - 4)医者・看護士の理解の促進、勉強会の実施
好奇の目でジロジロみられる。MTFの場合、胸を興味本位にさわるとか、カルテを何度も見て不思議そうに反応をするとか、無理解な質問「乳房女性化症ですか?」と聞く等は避けて欲しいです。そのためにも、性同一性障害についての勉強会を開き、理解の促進に努めて欲しいです。 - 5)入院時・診療時の戸籍の性別への強制をしないで欲しい
MTFは女性部屋、FTMは男性部屋への配慮して欲しいです。トイレの使用、検査時の対応のついても配慮して欲しいです。 - 6)治療・検査への説明を詳細にして欲しい
当事者が治療を理解する上で重要と思います。 - B.GID医療全般に対する対応として
- 1)性同一性障害の治療の出来る医療機関を充実・公表して欲しい。
県内には性同一性障害の治療の出来る医療機関、第一治療である精神療法ですら受ける医療機関がありません。あったとしてもなかなか全ての当事者に情報が行き届いていません。性同一性障害に関心を持ち、理解を示して下さる医療機関を増やし、性同一性障害の治療が出来る医療機関の充実(最初の段階として精神科・精神神経科・心療内科・泌尿器科など)、性同一性障害の治療ができる医療機関の公表をして欲しいと思います。 - 2)マニュアルの作成を考えて欲しい
上記Aの項目などをまとめ、一般の診療について当事者にどのように対応するべきかを、福島県の大原総合病院が作成した性同一性障害の当事者への一般の診療マニュアルを参考にして、マニュアルを作成して欲しいと思います。当事者が安心して医療を受けるためにもマニュアルがあったほうが良いと思います。その際、県医師会の会員の医療機関全てが同じマニュアルを共有するのが望ましいです。 - 3)他の医師会との連携を考えて欲しい
2)のマニュアルを共有することや、性同一性障害についての勉強会を合同で行うなど、また情報交換をするなどしてほしいと思います。また当事者が他の医療機関で診療を受ける際、また一から性同一性障害であることを説明しないで済むように連携して欲しいと思います。 - 4)今後の諸問題解決のために、性同一性障害当事者と医療機関の定期的な協議の場を設けて欲しい
当事者の声を聞くのがとても大切なことです。諸問題を解決するために、当事者と医療機関、専門家との協議の場があれば問題解決の道が見えてくると思います。
以上、列挙しました項目の改善・実現を宜しくお願い致します。
医療機関に診療して頂く事を最終的に決断するのは当事者自身ですが、治療を受けたくても受けられない、当事者にとって一般の診療ですら受けにくい今の医療機関の諸問題を解決し、当事者と医療機関の間にある障壁を低くしていくことは医療機関にとっては責務だと思います。
要望の理由・経緯等
私は、今年の1月に富山家庭裁判所高岡支部で名の変更を許可され、男性名で生活していますが、4月の統一地方選挙で選挙の投票入場券の性別欄に「女」とあることを不服とし、入場券や印鑑登録証明等の行政公文書の性別欄削除を6月に福岡町に要望し、今月19日の福岡町議会で印鑑登録条例改正案が可決し、10月1日より検討された結果性別欄削除の可能な文書について、性別欄が削除されます。また、7月に県議会の方へも「性同一性障害を抱える人々が、普通に暮らせる社会を実現することを求めることに関する陳情書」を提出し、その中で、富山県の性同一性障害者に対する医療の充実を求めました。しかし、県からの回答を頂けない現状です。
私は現在、精神科で月に1度カウンセリングを受けていますが、性同一性障害を専門に診る病院でなく、医師、臨床心理士が性同一性障害に関して勉強してくださり、カウンセリングを受けています。
私は、身体の嫌悪感が少ないため、身体の治療を望んでいませんが、県内の性同一性障害当事者の中には、身体への嫌悪感が強く、県内・市郡内でガイドラインに沿った治療を望む声を耳にしています。
県内・市郡内には正式な性同一性障害の治療が出来る医療機関が無く、岡山大学・埼玉医科大学まで治療に行っている当事者も県内にはいて、大きな負担となっており、または金銭的な面・時間的な面でやむなく治療を諦めている当事者が多数いると予測できます。
県内にジェンダークリニックが開設されるのは県内の当事者はもとより、北信越地方の当事者にとって、少しでも時間的・金銭的な負担が減ることを願います。
私の場合は、医師や臨床心理士が対応してくださいましたが、ジェンダークリニックではなくても第一治療としての精神治療の出来る医療機関が無く、治療を諦めている当事者も少なからず存在すると思われます。
また、一般の診療に関しても医療関係者の無理解により、周囲に奇異な目で見られることを苦痛と感じ、高熱が出ても診療してもらうことが出来ない当事者がいるのが現状です。
そういう当事者のためにも性同一性障害の治療の出来る医療機関の充実、医療関係者に理解を深めてもらうことが急務とし、今回要望に至りました。
7月に富山県のセクシュアル・マイノリティ市民ネットワーク「K.K.TOYAMA」を立ち上げて、性同一性障害当事者がごくわずかですが、表に出てきていますが、市郡内・県内にどれくらいの当事者がいるかはわかりません。また、カミングアウトできずに表に出てくることの出来ない当事者のためにもまず、医療機関として当事者との障壁を低くして頂きたく願います。
県内・市郡内にも、性同一性障害に優しい、精神科・婦人科・泌尿器科などの拠点整備が必要だと思います。
また、ホルモン治療に関して弊害(精神的なことも含めて)が出たときのために、すぐに対応出来るようなネットワークが有ればと願います。また、性別再適合手術(SRS)後の身体のケアをして頂ける病院も必要と考えます。
この様な性同一性障害者の内科受診や精神科及びホルモン療法などの初期・中期治療、また、SRS後の身体及び精神的ケアは各地域の病院や診療所でも可能な医療行為と思います。又、医療側の受け入れ窓口の拡大により、GID当事者の負担軽減と無謀な医薬品の乱用を防ぎ、より良い診療環境になっていくものと思われます。
- 1)現在経口ホルモン剤はインターネットなどを通じて手軽に入手でき、医師の手を経ずに摂取している方がかなりの人数になっています。このために、必要な検査などもせず、副作用に悩まされる方も出てくると思います。ホルモン剤の使用による副作用の症状が出ても、緊急的に見て頂けるお医者さまが各地域にはいません。また、社会的閉塞感や家族、職場、社会からの孤立など、或いは、ホルモン剤の使用による影響があるかも知れない、そのような精神的弊害も予測されます。
- 2)地方の精神科医の現状認識は当事者にとって悲惨な物があります。病院で受診しても、電話で問い合わせをしても、当事者を診療してくれる医者がいなく、医者も勉強をしながら、診療して頂けるようにお願いしても、門前払いです。中には診療許諾して頂いたかと思うと、実際の診療は2〜3分程度で、診療前から既に辞書のコピーを取り、一つの条項に○がしてあり、この条項に該当するので、GIDには当たらないなどと言われる医者もいるそうです。
- 3)又海外或いは国内でSRSされた方が、炎症などを起こして、病院へ直接行っても、電話で問い合わせしても門前払いにあい、この様な緊急の事態になっても、診察し治療してくれる医者がいないのが現状です。
- 4)医者(精神科医)の中には平気で闇診療や闇手術を推奨される方がいるのが現状です。医者自体が診療を拒否し、闇での医療を推奨する事に大きな問題があると考えています。
- 5)ホルモン療法を始めて体の変化が起こってくると、抵抗力が弱まるため風邪などをひきやすく、軽い病気でも医者の理解がないために、病院へ行く事も出来ずに悪化させてしまい、完治までに普通の方よりも数倍も掛かってしまうというようなことが有ります。 医療業界が当事者に理解がないために、時には命に関わる病気でも、病院に行く事も出来ずにいるのが現状です。(病状が相当悪化してからの受診になると推察されます。)
これらは埼玉医大から始まった、日本精神神経学会が定めたガイドラインの不備(様々な当事者に未対応。第二版の普及が遅れており先進の医療体制になっている所が少ないなど。)や各医療機関の無理解による物と推測しています。医療現場のこの様な認識を排除し、県内・市郡内でも当事者が安心して診療して頂ける病院の確保をお願い致します。
また憲法25条にも、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が全ての国民にある以上、当事者が健康で安全に暮らせる環境の整備が不可欠です。そのために、当事者にとっての安全・安心な医療とは何かという視点を第一に、医療機関に何ができるかという方向でGID治療を考えていただければ幸いと考えます。GIDの法制度を考える上でも、GIDの医療データが必要であり、その蓄積のために多くの当事者が医療機関に協力するように医療機関から呼びかけて頂きたいと思います。
以上 要望致します。
- ≪添付資料≫
- ・今年1月に富山家裁高岡支部で名の変更を許可された審判書のコピー
- ・富山県議会に対する陳情書のコピー
- ・富山県内における性同一性障害関連の新聞記事のコピー